愛知地方会 東洋医学研究所®グループ
○山下喜代、石神龍代、狩野義広、井島晴彦、黒野保三
【目的】
月経は女性にとって重要な生理的現象だが、様々な愁訴が出現するため、肉体的・精神的に大きな影響を及ぼしている。月経異常の中でも月経困難症に対して、鍼治療が有効であるとの報告がある。今回、月経困難症状を有する7例を集積し検討したことをまとめて報告する。
【方法】
平成10年から平成16年の7年間に東洋医学研究所の症例検討会において、 (社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部不定愁訴班月経困難症状質問表を用いて報告された7症例(平均年齢34.4±6.3)を対象とし、 (1)月経困難症状点数の推移(2)治療前と各周期の比較 (3)上位3項目の点数の推移について検討した。鍼治療方法は生体の総合的統御機構の活性化を目的とした太極療法(黒野式全身調整基本穴)とした。
【結果】
(1)月経困難症状点数の推移は7例共周期を追うごとに減少していった。効果判定では、7例中1例が著効、3例が有効、残りの3例が無効であった。(2) 治療前と1周期の比較では、Mann-Whitney検定において有意な差は認められなかった。2周期との比較では5%以下、3周期では1%以下と有意に減少した。 (3)上位3項目の点数の推移は、下腹部痛では治療前2.9±0.9から3周期には1.6±0.5、下腹部膨満感では2.3±0.9から1±0.8、嗜眠では2±1から0.7±0.5となり、下腹部痛と嗜眠において、5%以下で有意に減少した。全ての症例において日常生活に支障はない状態に改善した。
【考察・結語】
今回、効果判定は7例中3例が無効であったが、3周期以降も月経困難症状点数が減少傾向にあったこと、月経3周期には有意に減少したことから、月経困難症状に対して鍼治療が有効であると示唆された。
今後も、さらに症例を積み重ね、様々な角度から検討し、月経困難症状に対する鍼治療の有効性を証明していきたい。
キーワード:月経、月経困難症状質問表、黒野式全身調整基本穴、鍼治療