愛知地方会 東洋医学研究所®
○甲田久士、黒野保三
【目的】
鍼刺激は経穴部位に機械的な刺激を、灸治療は熱刺激及び化学的な刺激を与える。刺激の性質から組織に侵害刺激を与えている。その情報の入力系としての侵害受容器は機械刺激、化学刺激及び熱刺激に反応するポリモーダル受容器が関与していると推察される。先の報告で、筋ポリモーダルの機械刺激に対し、その反応性から弱刺激が生体には適量ではないかと推察される報告をした。過去の研究において、イヌ精巣ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応は、アスピリンにより抑制され、機械刺激の反応にプロスタグランジンが関与している可能性が示唆される結果を得ている。今回は筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対するアスピリンの効果について調べたので報告する。
【方法】
麻酔下のラットより取り出した長趾伸筋-総腓骨神経標本を用い、総腓骨神経より単一の筋ポリモーダル受容器活動をin vitroで記録しインパルス数を計数した。刺激時間は10秒間で20gの機械刺激を行った。アスピリンは30分間投与し、その投与前後で機械刺激に対する反応を調べた。
【結果】
アスピリン投与後の筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応は、投与前と比較すると抑制される傾向がみられkrebs液に置換すると、その機械刺激の反応はアスピリン投与前の反応に戻った。
【考察】
先の研究で、イヌ精巣ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応はアスピリンにより抑制されたが、今回の筋ポリモーダル受容器に対する機械刺激に対する反応も同様な結果を得た。これらから筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応にもプロスタグランジンが関与している可能性が示唆された。
【結語】
筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する受容特性を調べることにより、鍼刺激の作用機序を解明する一助になると考えられる。
キーワード:筋ポリモーダル受容器、鍼刺激、機械刺激、アスピリン、プロスタグランジン