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頭鍼と体鍼による生体反応の検討-(その2)心拍出量と総末梢血管抵抗値の変化-(福岡大会)

(社)全日本鍼灸学会 愛知地方会研究部頭鍼療法班

○ 田中法一、田中喜浩、倉知圭吾、藤井良平、竹内昭夫、蟹井美緒、林 秀樹、長谷川亮

 

【はじめに】

 第53回(社)全日本鍼灸学会学術大会(千葉大会)で頭鍼療法の特異性を目的に実験した結果として「頭鍼と体鍼による生体反応の検討 ―(その1)血圧の変化―」についてポスター発表した。今回その現象に関与する心拍出量(C.O.I)と総末梢血管抵抗値(T.P.R)の変化について実験した結果、頭鍼の特異性が認められたので報告する。

【方法】

被験者数14名、平均年齢34歳±20(男性11名、女性 3名)被験者配分(3群同一人物とし日替制とした)

無刺激群:コントロール群とした。

有刺激群:体鍼群{応用穴「曲池→合谷」「足三里→豊隆」}

頭鍼群{応用区「血管拡張区・運動区共に左右」}

【結果】

  1、心拍出量(C.O.I=基準値3.6~8l/min)は被験者14名の三群総合的変化から見ると、上昇値では、コントロール群が50%、体鍼群36%、頭鍼群50%の上昇率であった。次に下降値ではコントロール群で50%、体鍼群が64%、頭鍼群でも50%の最終時下降率であった。

C.O.Iの平均変化率ではコントロール群-0.03、体鍼群+0.03、頭鍼群±0と変化は見られなかった。

2、総末梢血管抵抗値(TPR=基準値952~1308dyne/sec/cm-5)において、上昇値ではコントロール群が50%、体鍼群で64%、頭鍼群では29%の上昇率、下降値コントロール群で50%、体鍼群で36%、頭鍼群で64%の下降率であった。安静時値(ノーマル)から終了までC.O.Iに比較すると変動が激しかった。

TPRの平均変化率では、コントロール群+8.32、体鍼群+7.6に対して頭鍼群では-1.68となり、頭鍼群のみ減少傾向にある。被験者は健常者として扱ったが個々に観察すると高低差を示しているのも見受けられたが、体質個人差により実験数値に差が出たものと考える。

【考察】心拍出量(C.O.I)は生体のおかれた状況に応じて各器官に血流配分される、運動機能活性により血液配分が骨格筋・皮膚に全体の80%強の配分効率を高めるための心拍出量基準値が上昇する。以上のことから、実験姿勢の安静仰臥位による心拍出量(C.O.I)に与える体鍼・頭鍼の影響は少なく、生理的な安定を維持するものと考えられる。 次に、総末梢血管抵抗値(TPR)については、頭鍼群が平均変化率からも明らかにコントロール群や体鍼群とは異なり、より末梢血管を拡張させる事が示唆された。総末梢血管抵抗値ではコントロール群・体鍼群で抵抗値の上昇が著しく血流の流れに抵抗を示している。しかし、頭鍼群では逆に血管抵抗を緩和させ血流促進を促す事を示し特異性を示唆するものとなった。

【結語】従来の頭鍼刺激は経絡経穴の組み合わせや大脳皮質を頭皮上に想定して関与する想定皮質領野へ鍼刺する方法を基本とされてきたが、一説には「解剖学的には頭皮の刺激が脳直接にその刺激を伝える根拠は存在しない」とも言われ、又、「頭皮への鍼刺激は頭蓋骨が絶縁体の役割をする為、頭鍼刺激入力はダイレクトに大脳皮質に伝達されてその効果を示す可能性は低い」とも言われる。

頭鍼の刺激は、頭部に鍼刺激を与える事による刺激受容のあり方が迷走神経(副交感神経)優位の全身性生体反応を示すものと考えられ、又、多様な疾患に応用が効く治療法となる可能性がある。

 

キーワード:心拍出量、総末梢血管抵抗値、頭鍼