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不妊を伴う不安神経症に対する鍼治療の検討(福岡大会)

愛知地方会 東洋医学研究所®グループ

○山田 耕

 

【目的】

不妊を伴う不安神経症に対して鍼灸治療を施し、(社)全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班黒野保三班長作成の不定愁訴カルテを使用して鍼灸治療の有効性を客観的に検討したところ、一例ではあるが興味ある結果が得られたので報告する。

【症例】

患者は27歳女性。主訴は夕方4時ごろより徐々に不安感がわいてくる。初診時自覚症状:特に胸部圧迫感があり息苦しい、後頭部から汗がすごく出る、手足が冷える、月経不順、不妊。初診時他覚所見:脉状診は沈・滑、脉差診は腎経虚、背診は肩背強、腹診は小腹急、性格は神経質、眼瞼振戦++、舌振戦++。治療方法は、黒野式全身調整基本穴を使用した太極療法及び症状に対して百会、ダン中、内関に単刺術を、三陰交に糸状灸を行った。また、鍼灸治療期間は平成15年7月11日から平成15年12月10日までの151日間(45回)、治療頻度は週2回とした。

【結果】

不安感・胸部圧迫感が軽くなった。後頭部の発汗の消失。手足の冷えが消失。心理的にも落ち着けるようになった。初診時には不定愁訴カルテによる不定愁訴指数は32点、重症度判定では重症であったが、最終時において不定愁訴指数が11点となり、効果判定は有効となった。そして月経不順も改善し排卵(高温相)が出現し、その後に妊娠に至ることができた。

【考察・結語】

今回、不妊を伴う不安神経症に対し45回の鍼灸治療を施し、不定愁訴カルテを用いて検討したところ、鍼灸治療の有効性を客観的に見出すことができた。また、種々の不定愁訴が改善されたことにより、妊娠することができた。これは鍼灸治療が自律神経機能に作用し、種々の不定愁訴が消失し、心身ともに総合的に改善されたものと考えられる。

今後も症例を積み重ね、鍼灸治療の有効性を客観的に証明してゆきたい。

 

キーワード:鍼灸治療 不定愁訴カルテ 不安神経症 不妊