東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院
片岡泰弘、深谷悠平、村中友香、小林美鈴、木津正義、高橋順子、鈴木裕明
【目的】
本来不妊症患者は月経痛を主訴とはしないが、我々鍼灸師にとっては月経の所見が治療上で重要な位置を占めていることは周知の事実である。福岡大会で山下らが鍼灸治療後に月経痛が有意に減少することを報告しているが、臨床上、器質性疾患(子宮内膜症・チョコレート嚢胞・子宮筋腫等)の有無で、鍼灸効果が月経痛や月経状態に及ぼす影響に差がでることが示唆されており、不妊症患者という枠組みにおいて別途、月経障害指数調査表を用い調査したので報告する
【方法】
2004.11~2005.9までに明生鍼灸院に来院した不妊症新患228名に月経障害指数表(17項目・600点満点からなる)を来院時配布し、患者に月経初日から5日間記入させた。また、月経量・血塊・月経色の項目を別記付け加えた。調査期間は治療開始後、月経3周期とし、子宮に器質的疾患なしをA群、有りをB群とした。調査項目は鍼灸治療後の月経3周期における①月経障害指数の推移 ②月経状態の推移(月経質・月経量・血塊・月経色)とした
【結果】
有効な回答が得られたものはA群35名・B群13名①指数平均点:A群1周期目25.1±22.8 2周期目27.0±29.8 3周期目32.0±27.8(N.S):B群1周期目32.8±40.8 2周期目25.7±34.0 3周期目25.8±45.6(N.S) B群がA群より高い傾向にあった ②両群とも月経質はサラサラに、量は普通、血塊は少なくなり、経色も赤色になるなど月経の状態が変化する傾向が見られた
【考察・結語】
器質的疾患の有無に関わらず指数に有意な変化がなかったことから、治療効果にばらつきがあったことを意味している。これは不妊症患者にとって月経は治療の失敗を意味しており、精神的に不安定になりやすく情動の変化が影響していることと、ホルモン剤等の使用も背景にあることが示唆された