東洋医学研究所®
甲田久士 黒野保三
【目的】
鍼刺激は経穴部位に機械的な刺激を、灸治療は熱刺激及び化学的な刺激を与える。その情報の入力系として侵害受容器の1つであるポリモーダル受容器が関与していると推察される。この受容器の反応の修飾を調べる目的で、第54回(社)全日本鍼灸学会学術大会福岡大会にて、筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応がアスピリン(550μM)によって抑制されることを報告した。これよりプロスタグランジンが関与している可能性が示唆された。今回はアスピリンの濃度を変えて再検討し、インドメタシンの効果についても検討したので報告する。
【方法】
麻酔下のラットより取り出した長指伸筋-総腓骨神経標本を用い、総腓骨神経より単一の筋ポリモーダル受容器活動をin vitroで記録しインパルス数を計数した。刺激には10秒間で20gまで増大する鋸歯状の機械刺激を行った。アスピリン、インドメタシンは30分間投与し、その投与前後で機械刺激に対する反応を調べた。
【結果】
アスピリン(n = 6 : 55μM)投与後の筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応は、投与前と比較しても変化がなかった。まだ例数は少ないがインドメタシン(n = 3 : 10μM)では抑制される傾向がみられ、Krebs液に置換すると、投与前の反応に戻る傾向があった。
【考察】
今回、筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する反応はアスピリンの濃度が前回報告したものの10分の1のためか抑制されなかった。インドメタシンで抑制される傾向があり、プロスタグランジンが関与している可能性が再び示唆された。しかし、消炎鎮痛薬の中には高濃度では酸感受イオンチャンネルを抑制するものがあることが指摘されており、それも視野に入れ詳細に検討していきたい。
【結語】
筋ポリモーダル受容器の機械刺激に対する受容特性を調べることにより、鍼刺激の作用機序を解明する一助になると考えられる。
【キーワード】筋ポリモーダル受容器 機械刺激 アスピリン インドメタシン プロスタグランジン