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中心血圧について

平成19年10月号

生体制御学会ホームページ委員長

河 瀬 美 之

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は循環器学会など循環器の専門領域において最近注目されている中心血圧について、生体制御学会研究部循環器疾患班班長の服部輝男先生に以下のように解説して頂きました。

 

中心血圧について

 

生体制御学会研究部 循環器疾患班班長

服 部 輝 男

 

 最近の循環器の研究において注目されている中心血圧とは大動脈の心臓起始部の血圧のことをいい、上腕での血圧値とは異なった値を示すといわれています。

 上腕での測定における最高血圧(SBP)が同じ130mmHgという血圧値であっても、中心血圧は20歳ではSBP100mmHg前後、80歳ではSBP150mmHg以上ということもあります。

 動脈はその構造と機能の違いにより、大きく弾性血管と筋性血管に分けられ、弾性血管である大動脈は本来弾性力に富んだ構造で心臓から駆出された血液の圧力と容量を保持し(コンプライアンス)、末梢へ血液を送る機能(ウィンドケッセル効果)を備えています。

 血管障害は加齢変化に各種の動脈硬化因子(高血圧・生活習慣病etc)が加わり進展し、多くの心血管疾患を発症させますが、動脈硬化には2つの病態があります。動脈硬化はアテローム硬化(atherosclerosis)であり、内膜に起こる粥腫形成(atherosis)と中膜を中心に起こる壁硬化(sclerosis)を意味しています。内膜には脂肪斑、粥腫、石灰化、潰瘍形成、血栓付着がみられ、プラークの破裂(plaquerupture)によって生ずる血栓性閉塞が急性冠症候群などを発症させることが紹介されて以来、心血管疾患発症の重要な病態として、内膜を主病変とする粥腫形成(atherosis)が注目されてきました。

 一方、中心血圧に大きく影響するのは中膜に生ずる動脈壁硬化あるいは動脈コンプライアンス低下として認められ、これが動脈硬化(Arterial stiffness)という概念です。

 この動脈コンプライアンス低下も血行動態あるいは動脈硬化の進行にさまざまに影響するため臨床的に重要です。