東洋医学研究所®グループ 栄鍼灸院
石神龍代、近藤利夫、黒野保三
【目的】
車社会の現代において、交通事故による後遺症に苦しんでいる患者は少なくないと思われる。今回は、交通事故後に発症した腰痛に対して鍼治療を行い、RDQ日本語版とVASを用いて経過観察を行ったところ、興味ある結果が得られたので報告する。
【症例】
患者:46歳、女性。現病歴:平成18年12月7日自家用車を運転中にトラックがぶつかってくるという交通事故にあい、その後、頭痛、肩こり、左肩から腕にかけての痛み、腰痛などの症状が出てきた。整形外科にて治療を受けていたが、はかばかしくないので鍼治療を希望して来院した。
鍼治療は、太極療法と局所療法を、週に2回の頻度で、平成19年6月23日から10月30日までの間に、36回施した。そして、腰痛に対して毎回治療前にRDQ日本語版を、毎回治療前後にVASを、患者に記入してもらい、経過観察を行った。
【結果】
腰痛は、初診時RDQ12点(偏差得点33.4)、VAS27→0であったが、8回目RDQ8点、VAS25→0、15回目RDQ6点、VAS6→0、22回目RDQ4点、VAS15→0、29回目RDQ7点、VAS19→9、36回目(最終時)RDQ1点(偏差得点55.1)、VAS3→0となった。初診時訴えていた腰痛以外の頭痛、肩こりは消失し、左肩から腕にかけての痛みは改善し(NRS10→2)、普通の日常生活が可能となった。
【考察・結語】
今回交通事故遭遇後6ヶ月以上経過した慢性腰痛に対して鍼治療を施し、RDQ日本語版とVASとを用いて経過観察を行うことによって、鍼治療の有効性を客観的に証明することができた。また、年齢・性別を反映させたQOL状態を把握できるといわれているRDQの偏差得点によっても鍼治療によるQOLの改善が客観的に証明された。
今後も慢性腰痛に対する鍼治療の有効性を証明していくための評価法として、RDQ日本語版とVASを使用していきたい。
キーワード:鍼治療、慢性腰痛、RDQ、VAS、QOL