1)東洋医学研究所®グループ絹田鍼灸院
2)東洋医学研究所®
絹田 章1)、中村弘典2)、黒野保三2)
【目的】
今日の糖尿病治療の目的は糖尿病コントロール状態を良好に保つことで、合併症を予防することである。今回、打撲後に高血糖を示し、2型糖尿病と診断された患者に対して(社)全日本鍼灸学会愛知地方会研究部生活習慣病班糖尿病カルテを使用して糖尿病コントロール状態の悪化防止を目的に鍼治療の有効性を検討した。
【症例】
63歳、男性、打撲後に高血糖を示した2型糖尿病患者に対して太極療法(黒野式全身調整基本穴)、局所療法、随証療法の鍼治療を施した。治療期間は平成18年9月9日から平成19年3月5日までの178日間(50回)で、治療頻度は週2回以上としたが不定期となった。治療経過は糖尿病カルテの糖尿病自覚症状とHbA1C、随時血糖値を指標にして糖尿病コントロール状態を検討した。
【結果】
初診時のHbA1cが7.3%であったものが、最終時には6.4%となり、随時血糖値においても274mg/dlであったものが、152 mg/dlとなった。また、初診時の糖尿病自覚症状点数は8点であったものが最終時には4点となり、糖尿病自覚症状点数減少率は50%で効果判定は有効となった。
【考察】
本症例は、打撲のショックにより血糖のコントロールが悪化したものと考え、全身調整を目的とした鍼治療を施した結果、糖尿病自覚症状、HbA1cなどの糖尿病のコントロール状態に改善がみられ、糖尿病に対して鍼治療が有効であることが示唆された。また、種々の身体的ストレスにより血糖のコントロールが悪化することはよく知られており、今回のように鍼治療を施すことにより血糖コントロールの悪化を防ぎ、糖尿病の血糖コントロール状態を良好に保つことができることが推察された。
【結語】
打撲のショックにより血糖コントロールが悪化した2型糖尿病患者に対して鍼治療を施したところ、糖尿病のコントロール状態を良好に保つことができた。このことから鍼治療が糖尿病の治療手段としての重要な役割を果たすことが示唆された。
キーワード: 糖尿病、糖尿病カルテ、HbA1c、随時血糖値、尿糖