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糖尿病モデル動物に対する鍼治療の効果(Ⅵ)-OLETF(高血糖)ラットにおける検討-(京都大会)

東洋医学研究所®グループ1)

名古屋市立大学大学院医学研究科細胞機能制御学分野2)

中村弘典1)2), 黒野保三1)2),石神龍代1)2),河瀬美之1)2),山田 篤1)2),皆川宗徳1),鈴木 光2)

 

【目的】

 我々は、第54回(社)全日本鍼灸学会学術大会において、2型糖尿病に近いと考えられる軽症のSTZ誘発糖尿病ラットに対する鍼治療効果の機序は中枢である脳が中心となり、末梢に働きかけていると推察されることを報告した。さらに今回、肥満を伴う2型糖尿病モデル動物として、大塚製薬(株)徳島研究所で開発されたOLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラットに対し鍼治療効果及び機序について検討を加えたので報告する。

【方法】

実験には6週齢で体重約130gのOLETF雄性ラット及び、コントロールとしてLETO(Long-Evans Tokushima Otsuka)雄性ラットを用いた。ラットは3群に分け、Ⅰ群:糖尿病(18匹)、Ⅱ群:糖尿病+鍼治療(12匹)、Ⅲ群:コントロール(10匹)とした。鍼治療は週2回、経穴は中?・天枢・気海・肝兪・脾兪・腎兪に切皮程度に治療を行った。空腹時血糖値は、20時間絶食後簡易血糖測定器で測定した。また、体重を週1回測定した。

【結果】

鍼治療群の空腹時血糖値は、糖尿病群の空腹時血糖値に比べ有意な低下が認められた(P<0.05)。体重においては、3群において有意な差は認められなかった。しかし、鍼治療群の体重は糖尿病群に比べ減少傾向にあった。

【考察・結語】

今回の結果から、鍼治療群は糖尿病群に比べ、空腹時血糖値の有意な低下が認められ(P<0.05)、鍼治療がOLETFラットの糖尿病に対し有効であることが示唆された。しかし、OLETFラットの糖尿病発症の一因と考えられる過食による体重の増加(肥満)を改善することはできなかった。このことから、鍼治療効果による空腹時血糖値の改善は食欲抑制によるものでなく、代謝機能の活性化によるインスリン抵抗性の改善による可能性が高いことが推察された。

 

キーワード:糖尿病, 空腹時血糖値,STZ誘発糖尿病ラット,OLETFラット, LETOラット