東洋医学研究所®グループ 明生鍼灸院
森誠一郎、木津正義、村中友香、深谷悠平、南 昌枝、渡邊由香、辰巳千之、鈴木裕明
明治国際医療大学 臨床鍼灸学教室
本城久司、北小路博司
【目的】
近年、高度生殖医療の進歩によりARTの妊娠率は向上してきたが、卵巣刺激に対する低反応症例の治療法は確立されていない。今回、それらの症例に対して鍼灸治療を行い、今まで当院が報告してきた治療法に加え、陰部神経への低周波鍼通電療法を試み、興味深い結果が得られたので報告する。
【症例】
症例1は47歳女性、不妊歴17年2ヶ月、過去25回以上のART経験がある。45歳までは採卵できていたが、それ以降はできておらず、カウフマン療法を続けるが卵胞の発育が見られない。症例2は38歳女性、不妊歴6年、過去3回のART経験がある。その後、6周期卵巣刺激を行うが、採卵できなかった。
【経過】
治療は、2症例とも週に2回の鍼灸治療を基本とし、治療Aとして、明生鍼灸院不妊症基本穴への鍼治療と、腹部・背部・下肢への温灸治療を行い、続いて中ﾘｮｳ穴刺鍼を週に1回併用した。著明な効果が見られなかったため、治療Bとして、治療Aに加えて週に1回、陰部神経刺鍼点への低周波鍼通電療法を行った。症例1は治療Ａを3ヶ月間、27回行ったが、採卵した1周期では卵胞は空で、卵子を得ることが出来なかった。その後、治療Bを8ヶ月間、59回行ったところ、5周期で3周期採卵できた。しかし異常受精であったので、胚移植できなかった。症例2は治療Aを8ヶ月間、76回行い、3周期で1周期採卵できたが、未熟卵で移植できなかった。その後、治療Bを7ヶ月間、54回行ったところ、7周期で4周期採卵でき、そのうち3周期で3個の受精卵が得られたので、現在凍結保存している。
【考察と結語】
症例1と2において当院の基本穴治療と中ﾘｮｳ穴刺鍼を行った期間よりも、陰部神経鍼通電を加えた期間の方が、より卵巣の反応に改善がみられた。このことより、卵巣低反応症例に対する陰部神経刺鍼点への低周波鍼通電療法が有用である可能性が示唆された。
キーワード：陰部神経鍼通電、不妊、ART、採卵
