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走査型電子顕微鏡による燃焼後のモグサ線維の微細形態観察(京都大会)

1)すこやか鍼灸院 2)関西医療大学 解剖学教室 3)金城学院大学                     

校條由紀1)、東家一雄2)、小林身哉3)

 

【目的】

灸治療はモグサの燃焼による温熱作用と皮膚に浸透するモグサ成分の効能を期待する治療法である。モグサ線維が含有する成分のひとつであるカフェタンニン(caffetannin:CT)には白血球の遊走能を促進する作用があることが報告されているが、今回、施灸による効果のメカニズムを調べる目的で、CTを含む成分を抽出したモグサ(CT(-)モグサ) の線維の燃焼前後の微細形態に関して走査電子顕微鏡にて観察し、通常モグサ線維の形態と比較した。

【方法】

施灸に用いる市販モグサを70%イソプロパノールに浸漬して処理したCT(-)モグサと未処理のCT(+)モグサ5 mgで円錐形の艾シュを作り、燃焼前の線維とスライドグラス上で燃焼させた線維の微細形態を走査型電子顕微鏡にて精査した。

【結果】

燃焼前のモグサは、CT(+)、CT(-)モグサともに、過去の報告のようにやや扁平で滑らかな筒状を呈するT字毛線維の集まりとして観察され、線維中央付近には所々にシール状の1本の溝を認めるなど、両者の形態に大きな差異はなかった。燃焼後のモグサ線維は両者とも薄く細くなり、その変化の程度はCT(-)モグサの方で強く認めた。また、スライドグラスに面する艾?底辺部では、CT(+)、CT(-)モグサとも燃焼部と燃え残り部との移行部の線維表面に油滴状構造物の付着像が認めた。CT(+)モグサではその直径が1~2μm程度の球形であり、線維表面に多数、観察された。一方、CT(-)モグサではその数が極めて少なく、形も不定型で大小不揃いであった。

【考察・まとめ】

燃焼後のモグサ線維表面に認められる油滴状の構造物は、燃焼熱により線維内部から浸出したと思われるCTを含むモグサ成分と関連する構造である可能性が高い。透熱灸の場合にはこの成分が燃焼に伴い浸出しながら艾シュの先端から徐々に下降し、艾シュ底面から皮膚表面に向けて作用するものと推察される。

キーワード:鍼灸、モグサ成分、走査電子顕微鏡、モグサ線維、caffetannin