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頚肩腕症候群に対する鍼治療の検討―不定愁訴と月経困難症状を伴った一症例―(京都大会)

東洋医学研究所®

田邊勝也 黒野保三

 

【目的】

VDT業務などにより近年増加傾向にある頚肩腕症候群を主訴とした患者に鍼治療を行い、元来抱えていた仕事上のストレスによる不定愁訴と月経困難症状が、短期鍼治療により軽減した経過を報告する。

【症例】

38歳女性。主訴:右母指から頚肩部への痺れと痛み 現病歴:仕事上、パソコン業務を一日5~6時間行っており、数年前に頚肩腕症候群を引き起こし現在まで緩解増悪を繰り返している。2004年10月に過呼吸を起こし、心療内科にてうつ、パニック障害、不安神経症と診断され服薬中である。月経は不定期であり、産婦人科にて月経前症候群(PMS)と診断され、月経時には眩暈、腰痛、下腹部膨満感などの月経困難症状及び経血過多などがみられる。

【方法】

生体の統合的制御機構の活性化を目的とした太極療法(黒野式全身調整基本穴への単刺術)を行った。治療期間:2007年7月7日~7月31日までの24日間(8回)(社)全日本鍼灸学会研究部不定愁訴班黒野保三班長作成の不定愁訴カルテと、月経困難症状質問表を用いて症状の推移を客観的に検討した。初診時所見:不定愁訴指数48点(重症度判定:重症)月経困難指数25点

【結果】

鍼治療8回目に、主訴である右母指から頚肩部への痛みは消失した。不定愁訴指数は初診時48点が26点となり、減少率45.8%で効果判定は著効であり、自律神経失調性項目は12点が3点と顕著に減少した。月経困難症状点数は治療前25点が、治療後9点に減少し種々の月経困難症状が楽になった。

【考察・結語】

今回、頚肩腕症候群を主訴とした患者に対し、生体の統合的制御機構の活性化を目的として7回の鍼治療を行ったところ、主訴以外の不定愁訴指数と月経困難症状点数の減少が見られた。7回の短期鍼治療でも、主訴や不定愁訴、月経困難症状の改善が認められたことから、適切な診断、治療技術、治療間隔により早期に治療効果を出せる可能性が示唆された。

 

【キーワード】不定愁訴 PMS 太極療法 不定愁訴カルテ 月経困難症状