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腰下肢痛に及ぼすプロスタグランジンE1注射製剤の効果

平成21年11月号

生体制御学会ホームページ委員長

河 瀬 美 之

 

 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。

 今回は『腰下肢痛に及ぼすプロスタグランジンE1注射製剤の効果』について、生体制御学会研究部疼痛疾患班の担当として私が以下のように報告致します。

 

腰下肢痛に及ぼすプロスタグランジンE1注射製剤の効果

 

生体制御学会研究部疼痛疾患班

河 瀬 美 之

 

 プロスタグランジンE1(PGE1)注射製剤には末梢血管の拡張作用があることが古くから知られており、その効能効果は腰部脊柱管狭窄症の症状を軽減し、安静時疼痛を改善することが認められています1)2)。

 現在、腰部脊柱管狭窄症のひとつの症状である間欠性跛行は患者の著しいQOLの障害をもたらし、手術療法を余儀なくされるのが現状であります。そこで、PGE1注射製剤がQOLレベルの向上を図ることが可能かどうかを研究した文献3)を紹介致します。

 

 対象及び方法として、2005年9月~2006年1月までの5ヶ月間に美濃市立美濃病院整形外科に受診した患者のうち、腰部脊柱管狭窄症と診断され入院した患者13例を対象に、PGE1注射製剤を12時間ごとに点滴静注して推移を検討した。

 QOL評価として以下の問診票を使用した。

 ①JRMDQ(the Japanese Version of tha Roland-Morris

      Disability Questionnaire)

 ②JOAスコア(日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準)

 ③VAS(visual analogue scale) 腰痛と下肢痛

 結果として、投与後2~3週までにすべての項目で有意な改善が認められ、その後は安定していた。

 考察と結論として、腰部脊柱管狭窄症の有効性が認められたため、手術療法を躊躇している症例や保存療法を積極的に希望している症例に対し、少なくとも3週間の投与を行い、投与開始4週後までに疼痛緩和やQOLレベル改善が認めなければ本剤投与以外の治療法を検討した方がよいとした。

 

 疼痛疾患において患者のQOL向上が注目されるようになり、様々な疾患に対する治療法が検証されるようになりました。今回はそのうちの腰部脊柱管狭窄症に対するPGE1注射製剤の有効性を検討した文献を紹介致しました。

 生体調整機構制御学会研究部疼痛疾患班では班員の先生方の協力のもと、腰痛患者に対する鍼治療の有効性を客観的に検討する目的で、VASとRDQを使用して腰痛とQOLレベルの改善を検討しています。今後は各種疾患に対する様々な治療法と鍼治療を比較検討していきたいと思います。

 

引用文献

1)出沢 明:PGE1投与の微小循環障害とレオロジー,整形外科53;1111-1117.2002.

2)鈴木尚志他:血流改善薬,痛みと臨床4;80-86.2004.

3)中村正生:腰下肢痛に関連したQOLに及ぼすプロスタグランジンE1注射製剤の効果.整形・災害外科52;203-208.2009.