平成22年2月号
生体制御学会ホームページ委員長
河 瀬 美 之
平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。
今回は『糖尿病モデル動物に対する鍼灸治療の効果』について、生体制御学会研究部生活習慣病班班長の中村弘典先生に以下のように解説して頂きました。
糖尿病モデル動物に対する鍼灸治療の効果
生体制御学会 生活習慣病班班長
中村 弘典
厚生労働省の2007年国民健康・栄養調査で、我が国の「糖尿病が強く疑われる人」が約890万人、可能性を否定できない「予備群」が約1320万人で、合わせて2210万人と推計されることが報告され、糖尿病が疑われる人は、10年前の1997年と比べ、約1.3倍に増え、今後さらに急増することが予想されている。
今回、糖尿病動物に対する鍼灸治療の効果についての実験結果を紹介したい(名古屋市立大学実験動物取り扱い規定に準拠)。
対象は、1型糖尿病モデル動物であるSTZ(ストレプトゾトシン)誘発糖尿病ラット、及び肥満を伴う2型糖尿病モデル動物として大塚製薬(株)徳島研究所で開発されたOLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty;自然発症高血糖)ラットに対する鍼治療効果について検討を行った。
鍼治療は、単刺術にてラットの腹部及び背部に切皮程度の鍼治療を週2回の頻度で行った。
実験結果は下図(左)にSTZ誘発糖尿病ラットの血糖値の推移を示し、下図(右)にOLETFラットの血糖値の推移を示した。
以上の結果から、鍼治療を行ったところSTZ誘発糖尿病ラットおよびOLETFラットの血糖値の上昇を有意に低下させることができた。
日頃から、黒野保三代表理事が提唱されているように、鍼治療は生体の調節機構を制御するそのものであることから、STZ誘発糖尿病ラットとOLETFラットのタイプの異なる糖尿病に対しても鍼治療が有効であるものと考えられる。
このことから、人の糖尿病に対しても食事療法及び運動療法などの生活指導に加え、生体の統合的制御機構の活性化を目的とした鍼治療(生体機構制御療法)を併用することが、糖尿病のコントロール状態を良好に保つ最良の手段であると思われる。
文献
1)http://www.dm-net.co.jp/calendar/2008/12/007740.php
2)中村弘典,黒野保三,石神龍代,皆川宗徳,鈴木 光.ストレプトゾトシン糖尿病ラットに対する鍼治療の効果(Ⅰ).全日鍼灸会誌.1996;46(2):80-4.