(社)生体調整機構制御学会研究部 生体防御免疫疾患班
東洋医学研究所®
中村 覚 橋本高史 角田洋平 石神龍代 井島晴彦 中村弘典 河瀬美之 皆川宗徳 絹田 章 黒野保三
【目的】
東洋医学研究所Rグループでは、過去3回にわたり花粉症に対する鍼治療の有効性を報告してきた。これまで日本アレルギー性鼻炎QOL調査票(JRQLQ) No.1、2、鼻アレルギー診療ガイドラインを用い検討したところ、JRQLQ No. 2において変化が認められなかった。そこで、治療法を再検討し、調査をしたところ興味ある結果が得られたので報告する。
【方法】
2008年2月から4月末までに東洋医学研究所®グループ5施設において、花粉症症状を訴えた患者43名(男性13名、女性30名。平均年齢52.4歳)を対象に、週1回以上の頻度で黒野式全身調整基本穴を用いた生体機構制御療法(太極療法)+局所療法(天突穴、廉泉穴)を施し、JRQLQを用い、1回目調査時と、鍼治療7回終了後の2回目調査時を比較検討した。
【結果】
JRQLQ No.1、2、花粉症重症度において全体的に改善傾向が認められた。項目別には、みずっぱな、総括的状態において有意な差(p<0.05)が認められた。JRQLQ No.2においてはこれまでの調査では改善がみられなかったが、症状有りの割合に注目したところ今回の調査ではやや改善が認められた。
【考察】
花粉症は花粉飛散ピークを頂点に鼻・眼などの症状が強くなるが、気道症状やのど症状においては飛散ピーク後に症状が強くなる傾向がある。これまで2回目調査時に増悪傾向であったJRQLQ No.2の気道症状の項目が今回の調査において改善がみられたことは、症状の有無に関わらず局所療法を加えるによって気道症状出現の予防ができることが考えられる。
【結語】
花粉症に対する鍼治療の効果については、これまでの調査と同様、花粉症症状が改善し、それに伴うQOLの改善傾向が認められた。また、花粉症に伴う鼻・眼以外の症状に対して局所療法を併用することにより気道症状出現の予防が出来ることが示唆された。
キーワード:日本アレルギー性鼻炎QOL調査票、花粉症、鍼治療、黒野式全身調整基本穴、生体機構制御療法(太極療法)