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不妊症患者の身体症状と妊娠との関連性の検討(その3)-妊娠に至らなかった症例での検討-(大阪大会)

木津正義

 

【目的】

我々はこれまで本学会にて不妊症患者に対して健康チェック表を指標とした発表を行い、そのいずれも健康チェック表の有用性を報告してきた。今回我々は、初診時の健康チェック表を指標に、妊娠に至らなかった患者について検討したところ興味ある結果が得られたので報告する。

【対象と方法】

2007年1月から2009年10月の間に当院に不妊症を主訴に来院した初診患者673名のうち、最低30日間以上鍼灸治療を行ったものの当院に通院中に妊娠に至らなかった352名(年齢35.0±4.1歳、不妊歴49.9±38.7ヶ月、病院治療歴28.0±30.3ヶ月)を対象とした。初診時での(社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班が作成した健康チェック表における合計点数および症状を示す各項目(合計50項目)について、鍼灸治療継続期間との関連性を単変量解析および多変量解析により検討した。

【結果】

鍼灸治療継続期間は6.1ヶ月(183.4±149.6日)であった。健康チェック表の合計点数は16.0±10.2点であった。健康チェック表の合計点と治療継続期間には有意な相関はみられなかった。単変量解析の結果、「下痢あるいは便秘をする」(F値:6.7)が最も有意な項目であり、さらに多変量解析の結果、「下痢あるいは便秘をする」(F値:6.0)、「腰や背中が痛くなる」(F値:2.7)の2項目が治療継続期間を予測させる因子であった。

【考察と結語】

健康チェック表は不定愁訴を評価する指標として用いられるが、全項目を対象に不妊症患者を評価することに用いるのは適さないことが分かった。しかし、その中でも「下痢・便秘」、「腰痛」に関しては有意性が認められたことから、その項目に関してさらに詳細に問診する必要性が示唆された。今後は不妊症患者に用いる指標をさらに検討し、不妊症患者の予後を早期に予測可能な指標を作成する必要性があると考える。

 

キーワード:不妊症、鍼灸治療、健康チェック表