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不定愁訴に対する鍼治療の検討-健康チェック表の解析(1)-(大阪大会)

東洋医学研究所®1)        

東洋医学研究所®グループ2)   

角村幸治1) 石神龍代2)

皆川宗徳2) 黒野保三1)

 

【目的】

(社)全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班黒野保三班長作成の健康チェック表は鍼灸院に来院した患者の不定愁訴を客観的に検討する目的で使用されている。石神、狩野らの報告を詳細に検討したところ、1回の鍼治療で自律神経失調性項目が大きく減少していることに着目して、今回、健康チェック表を初診時、次回来院時に限局して解析し、興味ある結果が得られたので報告する。

【方法】

対象は2002年1月11日~2009年11月18日の約8年間に東洋医学研究所®に来院した新患で2回以上来院した845名のうち、健康チェック表5点以下の121名、51点以上の23名を除外とした701名で解析を行った。調査分類として不定愁訴指数、重症度別分類、層別分類、項目別分類を比較検討した。検定方法として、マンホイットニーのU検定を用いた。

【結果】

次回来院時には不定愁訴指数、重症度別分類、層別分類において有意な減少が認められた(p<0.01)。層別分類の自律神経失調性項目については12項目中11項目に有意な減少が認められた(p<0.01)。また、50項目中31項目においてp<0.01、5項目においてp<0.05、計36項目において有意な減少が認められ、他の14項目は減少傾向はあるものの有意な減少は認められなかった。

【考察】

石神、狩野らの報告と同様に1回の鍼治療で不定愁訴指数が有意に減少していた。このことから、1回の鍼治療においても不定愁訴に対して効果があることが示唆された。また、層別分類においては、特に自律神経失調性項目の12項目中11項目において有意な減少が認められた。これらのことから、鍼 治療によって自律神経がよりすみやかに調節されることが推測される。

【結語】

今後も健康チェック表を使用して、鍼治療の治効メカニズム解明と、 よりよい臨床鍼灸治療に応用できるように調査、研究してゆきたい。

 

キーワード:不定愁訴、健康チェック表、1回の鍼治療、自律神経