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腹部への鍼刺激による胃電図の変化(大阪大会)

東洋医学研究所®グループ1) 東洋医学研究所®2) 

すこやか鍼灸院3)  華佗ハリ治療院4)  アジヤ鍼灸院5)

ニプロ株式会社国内事業部第一商品開発営業6)

甲田久士1)  皆川宗徳1) 石神龍代1) 中村弘典1)

河瀬美之1) 服部輝男1) 井島晴彦1) 山田 篤1)

迫井 豪1) 角田洋平2)吉田昌弘2) 校條由紀3)

杉﨑文彦4) 後藤博文5) 赤井良一6) 黒野保三2)

 

【目的】

臨床鍼灸の現場において、腹部の鍼刺激により、胃や腸の運動に変化があらわれるのは臨床上経験されることである。

胃運動に対する鍼灸の効果を確認した研究としては、黒野のテレビ博物館(1987年)におけるX線下での胃透視の研究があり、足三里刺鍼により胃運動が亢進したことを証明している。

 今回、健康成人を対象に胃電図を用いて腹部(中カン・期門・天枢・気海)へ

の鍼刺激(単刺術)が胃運動に及ぼす影響を調べた結果、興味ある結果が得られたので報告する。

【方法】

2008年6月から2008年11月までの間、毎週木曜日と毎月第4日曜日を研究日として実験を行った。ニプロ株式会社製の胃電図を使用し、健康成人18名(平均年齢33.3歳、男性13名:女性5名)に対し腹部(中カン・期門・天枢・気海)への鍼刺激(単刺術)を行い、鍼刺激前後での振幅の変化を調べた。

【結果】

中カン群(18名):49.2(μV)±22.7(平均値±標準偏差)→50.2±24.2、期門群(18名):56.9±31.8→54.0±31.3、天枢群(18名):49.0±31.7→41.8±26.7、気海群(18名):60.6±41.0→48.9±26.8となり、気海群のみ有意な振幅の減少(P<0.05)が認められた。

【考察】

今井らが用いた雀啄刺激の方法では、腹部刺激に対して有意に胃電図の振幅が抑制され、この振幅の抑制反応は交感神経を介するものと報告している。今回、単刺術で検討した結果、各経穴で振幅の増減が観察され、今井らの結果と異なった。このことから単刺術による振幅の増減反応は、交感神経を介する反応と副交感神経を介する反応とがあるものと推測される。

【結語】

腹部への鍼刺激(単刺術)による胃電図の変化を調べた結果、振幅の増減反応が確認された。今後、他の自律神経機能測定器との関連性を調べて行きたい。

 

キーワード:胃電図、鍼刺激、単刺術、自律神経、振幅