東洋医学研究所®1)
東洋医学研究所®グループ2)
やまもと鍼灸院3)
滝田怜未1) 皆川宗徳2) 石神龍代2)
中村弘典2) 河瀬美之2) 甲田久士2)
井島晴彦2) 山田 篤2) 迫井 豪2)
山本健太郎3) 黒野保三1)
【目的】
(社)生体調整機構制御学会設立記念講演で、黒野保三代表理事が「鍼灸診療の現場で摩訶不思議と思われる現象は膨大な数を示しているが、それらはほとんど検証されず放置されているのが現状である。今後、臨床鍼灸の現場で得られる摩訶不思議と思われる現象を交えた臨床研究が必要である。」と強調されていた。
今回、鍼灸診療の現場で得られる摩訶不思議と思われる膨大な数の現象中、鍼治療が睡眠の誘発に与える影響について着目し、「睡眠に対する鍼治療の実態調査」を行ったので報告する。
【方法】
調査期間:平成21年4月27日~6月20日までの約2ヶ月間、対象:新患及び再診患者、調査内容:年齢、性別、主訴、主な症状、睡眠状態、睡眠状態:次回来院時に、初回鍼治療日に(1.いつもより良く眠れた 2.いつもと変わらない 3.いつもより眠れなかった)を聞く。
【結果と考察】
集積数は、10施設で142名、男性60名・女性82名で男女比は1:1.4であった。平均年齢は51.0±16.3歳。主訴は疼痛を訴えているものが多く、全体の56%を占めていた。睡眠調査結果は、初回鍼治療日に、いつもより良く眠れた:89名(63%)、いつもと変わらない:50名(35%)、いつもより眠れなかった:3名( 2%)であった。
主訴が36項目あったが、睡眠状態と主訴との関連性は認められなかった。主訴の内容に関わらず、1回の鍼治療により63%の人が良く眠れたことが確認できた。
【結語】
睡眠調査の結果、初回鍼治療日に、63%の人がいつもより良く眠れたと回答した。今回の調査結果から、鍼治療は自律神経系に作用し、交感神経の働きを抑えて副交感神経優位に働きかけていると考えられる。
今後、今回の調査結果を踏まえて、鍼治療が自律神経に与える影響を客観的に検証する基礎的研究の必要性が明らかとなった。
キーワード:鍼治療、睡眠調査、睡眠状態、自律神経