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不妊症患者の身体症状と妊娠との関連性の検討(その1)-ARTと鍼灸を併用した妊娠例での検討-(大阪大会)

深谷 悠平

 

【目的】

我々は本学会にて健康チェック表を不妊症患者に用いた研究を報告してきた。今回、高度生殖医療(以下ART)で妊娠を望む患者に対する初診時の健康チェック表の各項目と妊娠に至る期間との関連性を検討した。

【対象・方法】

2007年1月から2009年10月に当院に初診来院した不妊症患者673例のうち、鍼灸治療を1ヶ月以上継続した271例(年齢35.5±4.1歳、不妊歴57.3±42ヶ月、病院治療歴36.1±33.9ヶ月)を対象とした。初診時での(社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班作成の健康チェック表における合計点数および症状を示す各項目(合計50項目)について、治療後の妊娠の有無と妊娠までに要した期間との関連性を検討した。

【結果】

妊娠群107例(34.6±3.8歳)と非妊娠群164例(36.1±4.3歳)の健康チェック表の合計点数は16.9±10点と14.8±9点で有意差はなかった。また、妊娠群は6.3ヶ月(189±145日)で妊娠に至ったが、初診時健康チェック表合計点数と妊娠に至るまでの期間には有意な相関はなかった。次に、妊娠に至るまでの期間と健康チェック表の各項目(50項目)に対して単変量解析を行ったところ、「寝つきが悪い」(F値:5.7)、「動悸がして気になる」(F値:5.4)が有意項目であった。また、多変量解析を行ったところ、「動悸がして気になる」(F値:5.3)、「寝つきが悪い」(F値:4.6)の2項目が妊娠に至るまでの期間を予測する因子であった。

【考察・結語】

我々は不妊症と不定愁訴が関連していると考え、健康チェック表を用いてきたが、今回得られた結果から健康チェック表の全項目から不妊症を評価することが難しいことが分かった。しかし本検討結果をもとに不妊症患者における注意すべき愁訴の存在が明らかにされた。今後は不妊症患者に用いるべき指標をさらに検討する必要があると考える。

キーワード:不妊症、健康チェック表、ART、鍼灸治療