東洋医学研究所®グループ１)
東洋医学研究所®2)
名古屋市立大学大学院医学研究科医学・医療教育学分野3)
石神龍代１) 皆川宗徳１) 山田 篤１) 各務壽紀１) 黒野保三2) 早野順一郎3)
【目的】
鍼灸医学では、ﾀﾞﾝ中穴は心疾患に有効であると記載されている。ﾀﾞﾝ中穴鍼刺激に対する自律神経反応の客観的評価を、心拍変動（heart rate variability、HRV）解析を用いて検討した。
【方法】
健康成人14名に対しﾀﾞﾝ中穴への鍼刺激（単刺術）を行い、鍼刺激前後の心拍変動の変化をGMS社製の心拍ゆらぎリアルタイム解析システムを使用して調べた。HRV解析は鍼刺激の前後10分間の心電図からR-R間隔を測定し、周波数解析により0.04-0.15Hzおよび0.15-0.45Hzの変動を、それぞれLow frequency(LF)、high frequency(HF)として、パワーの自然対数値（ln）と両者のパワーの比（LF/HF）を求めた。また、新しい心臓副交感神経活動の指標としてdeceleration capacity(DC)を評価した。
【結果と考察】
鍼刺激前後で心拍数（平均値±標準偏差）は73.5±9.3から70.8±9.1 bpmに減少した（paired t-test P = 0.0002）。DCは9.0±4.4から11.8±6.5msに増加した（P = 0.0017)。LnHFは4.8±1.1から5.3±1.3に増加した（P = 0.0001)。LnLFは5.5±0.7から6.2±0.8に増加した（P = 0.0026)。LF/HFは有意な変化を示さなかった（1.2±0.3から1.2±0.3）。
【結語】
ﾀﾞﾝ中穴鍼刺激により、心拍数の減少、心臓副交感神経の亢進が認められた。今回、ﾀﾞﾝ中穴鍼刺激に対する自律神経反応は従来のHRV指標も増加を示し、新しいHRV指標であるDCも明確な増加を示した。これらの結果により、自律神経反応の客観的評価が可能であるとともに、鍼灸医学で云う経穴の特異性も見い出すことが可能となった。
キーワード：鍼刺激（ﾀﾞﾝ中）、単刺術、心拍変動（HRV）、自律神経