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第250回定例講習会

日時:平成22年11月7日  午前9時30分~午後3時

場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室

内容

1)「臨床鍼灸医学研究」

(社)生体調整機構制御学会理事・名誉会長  黒野保三先生

①鍼灸界の置かれている立場について、国内外の情勢から説明いただいた。

②鍼灸医師として本来の医療の原点である病める人を治すという意味について説明いただいた。

③自然科学の進歩に伴い鍼灸治療や技術の解明がもたらす意義について説明がなされた。

(内容紹介)

 前回の講習会から、僅か1ヶ月の間に国は大変なことになっており、その影響による鍼灸界の状態について説明がありました。

 『学会というのは本来、政治の話が似合わないところですが、世界の中の日本、日本の中の医療、医療の中の鍼灸という観点から、政治は外すに外せないのです。医療の現場がないがしろになりそうな官僚政治の中では、医療行為も経営が主体となり、「医は仁術」ではなくなります。これでは社会のためにならないのは明らかです。

 本日の朝刊に偶然にも禅についての特集がありました。精神哲学の内の一つが禅であります。つまり人間性の確立がなければ、技術や知識があっても本来の医療には成り得ないはずです。ここでもう一度、医療人として鍼灸をおこなっているなら、まず鍼灸医師だという自覚をもたなければなりません。鍼灸医師だという自覚をもてば、本来の医療の原点である「病める人を治す」という、これだけのことに全力を注ぐために、自ら勉強し、知識や技術を身につけようとするはずです。また、新聞等などで医療の水際が危うくなっている現状においては、医療行為の約2割を看護師が実施できる範囲であるというアンケート結果が報道されました。本来なら、患者の身体の状態を見極め、医療行為の穴埋めができるのが鍼灸師であるはずなのです。しかしながら、現状では鍼灸師がその担い手になる気配はなく、その原因も鍼灸師自身の資質が上がっていないことに他なりません。

 東洋医学といわゆる近代医学の最も違う点は、中国医学の医者は患者の身体を診ているのに対してギリシャ医学の医者は患者の身体を診ていないことです。このことからも、患者にとってより良い医療の提供者はどちらであるのかということも想像できると思います。

 自然科学の進歩にともなって、指の動きや指先の技術が脳でわかるようになってきました。鍼灸の技術の発展も証明できるようになってきたことから、より良い鍼灸師の教育は、やはり正しい場所での勉強により正しい知識に基づくことの必要性が如実に明らかになりました。』と教えて頂きました。

 続いて、指先の構造、特に感覚受容器の機能の構造から、感覚について講義頂き、その神経回路が訓練によって発達することを示され、その習得方法についてご教授頂きました。

2)「臨床工学研究の基礎 医用教育訓練システム構築の試み―バーチャルリアリティ技術とその応用研究―」(認定指定研修C講座)

藤田保健衛生大学医療科学部・麻酔工学科教授 金平  蓮先生

「臨床工学研究の基礎 医用教育訓練システム構築の試み―バーチャルリアリティ技術とその応用研究―」と題し、教育訓練システム構築に関する最新情報を交えながらバーチャルリアリティ技術から東洋医学に使用できる応用研究について詳細な説明があった。

3)「生体防御免疫疾患の基礎・臨床、診断と治療」

(社)生体機構制御学会研究部生体防御免疫疾患班班長  井島晴彦 先生

「生体防御免疫疾患の基礎・臨床、診断と治療 抗体・補体について」と題し、スライドを使用し抗体の特異性を中心に詳細な説明がなされた。

4)生体防御免疫疾患に対する症例報告・検討

脈診研究会 鍼和会相談役 林 﨨一先生

「気管支喘息の鍼灸治療について」と題して症例検討が行われ、活発な質疑応答があった。