日時:平成23年3月6日 午前10時00分~午後3時30分
場所:名古屋市立大学医学部教育棟2F 第1講義室
内容
1)「臨床鍼灸医学研究」「サイエンスとしての鍼灸診療」
(社)生体調整機構制御学会理事・名誉会長 黒野保三先生
①医療界及び鍼灸界の最近の情勢について説明がなされた。
②医学研究の基礎について、医療の水際で役立つことが本来の研究であることの意味について説明がなされた。
③鍼灸師は権力のない内科医師であるという意味について説かれ、その価値を高めるための自覚に基づく行動の必要性について、説明がなされた。
(内容紹介)
前回の講習会からわずか1ヶ月です。たった1ヶ月の間に、またもいろいろな問題が出てきており、変化した社会情勢から鍼灸にまつわる環境を説明いただとともに示唆いただきました。
「最近の医療界は非常に残念なことが多いです。特に抗癌剤の使用では、新しいものが出来たら新しいものを使用しようとしますが、それでは今まで使ってきた薬は何だったのでしょうか。このように、不安定要素が強いものが平然と使用されているわけです。また、このような分野で鍼灸診療に対する期待とともに頭から否定される事も多々あるわけです。残念ながら医療界も混乱している状態ですが、鍼灸界も輪をかけて混乱しているわけです。本来、鍼灸が担うのは、今やブームのように取り上げられている美容鍼灸やスポーツ鍼灸ではなく、医療の中の内科が主流にならなければなりません。そして、そのような鍼灸診療を行うには神経生理学に基づいた基礎がなければ成り立ちません。
また、このことでも明らかになりましたように、医学研究というものは医療の水際に役立つことが大事です。言い換えれば、患者にいかにいい治療を提供できるかということです。私の研究はすべて臨床にあることから研究したものであるため、臨床の現場に戻ってくることが出来るわけです。
このような研究を行う基には、やはり医療の一員として両足をふまえて患者に向き合うために基礎・臨床を行いますが、鍼灸師は権力をもたない内科医師だという自負があるからです。自負する以上はそれにみあった行動をとらなければなりません。最近になって医師の生涯研修の重要性が説かれ、患者に対する医療の安全安心の確保のために臨床の技量を保つことの再考がおこなわれております。鍼灸でも同様なはずですが、その場所が正しい場所でなければなりません。当学会はサイエンスとしての鍼灸診療を行うための基礎を着実に積み上げ、講習しております。ここから、発せられる情報には必ず根拠があることが認められ、他の鍼灸界でおこるような言葉だけの一人歩きは認められていません。
再度のべますが、鍼灸師は権力がない内科医師です。そこでもう一つの問題があります。ということは死亡診断書が書けないとともに医療機器の使用にも制限があるわけです。そこで、鍼灸をおこなうものの感性の重要性が説かれるわけです。これも今までお話してきましたように、人間の感覚で特に重要な触覚の構造や機能が明らかになってきており、その機能を鍛えることが可能であることも示されています。この感性を磨いているものでないと鍼治療ができないのも一目瞭然であります。」と説かれ、サイエンスとしての鍼灸の価値を高めるための考え方や方向性を示して頂きました。
2)「生体防御免疫疾患の基礎・臨床、診断と治療」
(社)生体機構制御学会研究部生体防御免疫疾患班班長 井島晴彦 先生
「免疫組織について」と題して、スライドを使用し、免疫を担う組織を理解するために、そのメカニズムについて詳細な説明がなされた。
3)「リウマチ性疾患の基礎と臨床」(認定指定研修C講座)
藤田保健衛生大学七栗サナトリウム内科教授 松本美富士先生
スライドを使用し、リウマチ性疾患のうち関節リウマチを中心とした免疫学について、最新情報を交えて詳細な説明があった。
4)生体防御免疫疾患に対する症例報告・検討
愛知漢方鍼医会代表 高橋清吾先生
心包・三焦を中心とした漢方の考え方と免疫との関わりについて検討が行われた。
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